「形にした瞬間に、圧倒的に嘘。絶対に嘘です」と、あるアーティストの方は言った。
アーティストは、その人が内部に描いている何かを形にするのだろうと思う。しかし、世界に生み出され、現実に晒された形は、「そのままの姿」ではない。
地球の重力、汚れていく部屋や建物、街、…。人々の称賛、批判、中傷、…。そういったものに晒されて、それはそのままの姿で世界に存在することはなくて、嘘になる。
嘘を生み出しながら、嘘の中に「そのままの姿」を少し見いだしてもらえれば良いのかもしれない。それは哀しいことである気もするけれど、現実とはそういうものだし、それが美しいようにも思う。
アートに限らず、あらゆる営みが嘘であると思う。語弊はあるかもしれないが、僕は「嘘」を生きている。ただ、生きている以上、その「嘘」は真実でもある。それ以外にどうしようもないのだから、それはやはり真実なわけだ。
大切なことは、精一杯に嘘をつくことだと思う。「嘘だな…。哀しいな…。」と自覚しながらも、嘘は嘘で、精一杯についていくことが大切だと思う。仕事をすることも、家庭を営むことも、たぶん少しだけ、真実と繋がっている。
自分が真実なのか、世界が真実なのかはわからない。おそらく、どっちもどっちだろうとは思う。ただ、接点はあって、接続はしている。僕はそう信じたいと思っているのだと思う。