デザインの境界条件

デザインという行為に限らず、何かしらの形(解)を発見しようとする時には、法則(方程式)に加えて境界条件が必要となることが多い。

例えば、物理学における「ニュートンの運動方程式」は、(非相対論的古典力学において)質点の運動を記述できるが、初期条件(位置や速度など)を与えないと具体的な運動を導くことはできない。また、時間発展方程式であるニュートンの運動方程式において、「時間」は特別な境界条件として扱われる。

 

デザインにおいて「法則」とは、その形が持つ世界観やコンセプトであろうと思う。そのデザインの中心に据えられている、すべてを束ねる力が「法則」である。

しかし、デザインが実際的な行為であるからには、必ず拘束が存在する。物理学における「時間」と似ているが、「納期」はわかりやすい境界条件(拘束条件)だと思う。

 

Wikipediaの表現がわかりやすいように感じたので、参考にすると、「境界条件は、興味のある解の探索領域とそれ以外の領域とを分けるために設定」される。境界条件は方程式から導くことはできず、多くの場合は、取り組んでいる方程式より一般的な法則によって決まっている。

デザインにおいて、境界条件とは問題定義であり、かつ、該当するデザイン行為によっては操作できない世界の在り様である。

 

境界条件の興味深い点は、それが拘束や制約であると同時に、解を導くために不可欠なものである点である。境界条件が無いと、具体的な解を導くことができない。具体的な解を導けない、ということは、デザインという行為が成立しないことに近い。

「境界条件」を世界、「方程式」をコンセプトと捉えると、デザインとは「世界を観察し、適合するコンセプトを発見する行為」、あるいは「拘束の中で、世界に働きかけるコンセプトを打ち立てる行為」のいずれかだと思う。前者は自然科学的で道教的な価値観、後者は人間科学的で儒教的な価値観だと感じる。