サイバネティクス

情報化、デジタル化と言われて久しいが、20世紀の中葉に情報・通信の理論化が始まった時点で、それが極限まで突き詰められていくことは予感されていたとも言える。

理論を推し進めることは、近代、そして科学の宿命だと思う。

 

クロード・シャノンの「通信の数学的理論 (ちくま学芸文庫)」は、あらゆる情報がビットで表現できること、それらの情報を(ノイズが混入する回路においても)通信によって伝達できることを示し、情報通信の時代を幕開けたとも言われる。

あらゆる情報がビットで表現できるということから、生物と機械の境界は無くなり、問題は通信と制御へと移っていく。情報空間と制御システムという観点で、あらゆるものが捉え直されていく。

 

ノーバート・ウィーナーは、通信と制御の問題によって規定される領域を「サイバネティクス」と呼び、マルティン・ハイデッガーは、哲学が解体された後に哲学に変わる学問はサイバネティクスであるとシュピーゲル会談において答えている。

中国が掲げる「社会主義の現代化」は、欧米諸国では「デジタル・レーニン主義」という呼称でも呼ばれるが、通信と制御によって社会システムをアップデートする試みとして、サイバネティクス的だと感じる。

 

人間の生き方も、通信と制御によってコントロールされる、もしくはコントロールできる部分がそれなりにあるのだろうなと思う。余計な情報に触れない、というだけで、日々がシンプルになるように。

 

ウィーナー サイバネティックス――動物と機械における制御と通信 (岩波文庫)
ノーバート・ウィーナー
岩波書店
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